ビラーンの医療と自立を支える会(HANDS)

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現地報告 ビラーン通信34号より

ブラクール・コミュニティー学校運営自立へのシナリオ

繁殖用オス1匹と10匹のメス山羊を
小屋に連れて行くブラクールの子ども達
   ブラクールは、都合で活動を停止した「少数民族里親の会(FOT)」に代わり、昨年6月から当会がその支援を引き継いだスルタンクダラト州の山岳部のマノボとチボリ民族からなる村です。
 ビラーン民族コミュニティーと同様に、樹木の消えた急傾斜のやせ地に、コーンや根菜類を栽培して日々の糧を得ている地域です。
 当然のことながら子ども達の教育や医療費の負担ができる現金収入はなく、特に教育についてはFOTの資金援助を受けてきました。
 
 しかし、現地NGO(PFP)による住民の組織化と、これも主にFOT資金によるアグロフォレス
トリー(樹木作物の等高線状植栽や樹間の根菜類栽培など)の成果が少しずつ実を結びはじ
めました。教育支援を引き継いだ当会も、山羊飼育プロジェクトなど、将来のコミュニティー活
動自主財源を増やす支援を開始しました。過去に植えたアバカ(茎の部分は伝統織物ティナラ
ク織りの原料繊維となり、ロープその他の各種製品の原料としても需要がある)やコーヒーに
ついては、年1万円程度ですがすでに収入を得ていて、来年は山羊からの収入が、さらに2006
年度にはドリアンなどの果樹販売収入も2−3万円見込まれています。この自主財源の増加に
従い、当会の支援金も減額できる予定で、5カ年計画の最終年には、今年度の15%程度にな
る見込みです。
 
この5月末には、今後の自立にむけた事業の企画・実施方法などに関するセミナーが、スララ
町のPFP事務所で開かれ、ブラクール住民代表数名も参加しました。住民自治会を中心にし
て、ブラクールは10年後の完全自立を目指しています。私たちが関わる15余りの先住民族コミ
ュニティーの中で、もっとも確かな自治・自立への道を歩む村として期待されます。



コミュニティー組織化の担い手として再出発します
 ― 教師再教育事業(NIA助成)対象の元教師ロウェンダとチャリタ ―


民族衣装のロウェンダ
   資格のない教師は教壇に立ってはならないという厳しい政府(教育文化スポーツ省)の通達で、ビラーン民族小学校の3名の教師が、NIA(新潟県国際交流協会)の助成を受けて、マーベルの大学に編入したのは2年前のことです。

 しかし、初等教育課程への編入失敗で、教師資格取得には遠回りの教養学部史学科やコンピューター科に在籍しての学生生活が始まりました。うち1名は1年目終了を前に中退しました。残るロウェンダとチャリタは最後までがんばりましたが、事業期間内の必要単位取得は難しくなり、目指した初等教育教師の資格を得られないままに、この3月同じく中退を決めました。この二人は、現在、新しい支援地域バラク村の住民の組織化を手伝い、6月からはそれぞれサムラング及び近隣コミュニティーで、幼児教育と大人の識字教育を担当します。

 小学校教師としての復帰ではないけれど、年下の奨学生たちと寮生活を共にしながら学んだ大学での2年間は、コミュニティー指導者として復帰した今、何らかの形で生かされることと思います。



― また、一つ簡易水道が完成しました ―
ミアソン寮の学生と周辺住民約150名

 週末は畑仕事を手伝えるように、なるべく親元に近いところで中等教育も受けさせたいという
親の願いに応えて、ミアソン・バランガイに、札幌の中田さんの資金協力で3棟の学生寮がで
きて約1年半がたちました。
 入寮者のほとんどは、歩いて約3時間のマグロ山腹の村アトゥモロック出身です。バランガイ
の有力者から提供された寮の敷地は広く、空き地で自給用野菜栽培も始まりました。
 
 問題は水と電気がないこと。水については、当初隣接するドールパイナップル農園の灌漑用水が使えましたが、なぜか
使用禁止となりました。周辺住民にとって
も水の確保は緊急の課題だったため、(財)FIDRの助成を受けて、昨年9月に簡
易水道の建設を始めました。水源が比較的近く、2ヶ月後の11月には、学生寮と集落内に数箇所の水飲み場が完成しました。かつて対立関係にあった先住民族の村アトゥモロックと入植者の村ミアソンですが、寮母のジュディアさんによれば、周辺住民から野菜の差し入れがあったりして、水の共同利用を通じて交流が深まったようです。
 
寮舎近くで洗濯をする住民



世帯数25の小さな村シラルにも、まもなく水が届きます

 ゼネラルサントス市から車で約4時間、徒歩1時間。
その間、橋のない川を30回以上渡らないとたどり着けないシラルは戸数25、人口200の小さな
コミュニティーです。

シラルの住民と子どもたち
   水の便が悪いため、日頃から水不足に起因する疾病が多く、旱魃の昨年は収穫もほとんどなくて大変でした。大部分の村人が糧を求めて町にでました。技術も教育もない村人に職はなく、まもなく全員村にUターン。幸い、ミアソンとともに当会の簡易水道建設対象地域として、助成機関(FIDR)の承認も得て11月には工事が始まりました。村人総出の作業(バヤニハン)で、今月初めに竣工を祝うことができました。水を得るためのこの共同作業で、住民は村で力を合わせて生きていこうという連帯感を強めたようです。



アトゥモロック母親クラブが発足

 豚を飼いたい、人参と玉ねぎ栽培に挑戦したい、ビーズ細工もと、3ヶ月前に発足したアトゥ
モロックの母親クラブが、いよいよ小規模ながら現金収入増加事業を始めることになりました。
4年前の多目的住民組合育成事業は、思ったほどコーンやジャガイモの収穫があがらず、借り
た種子代や抵当に入った土地取り戻し資金が返済できない住民がでました。購入したコーン
脱粒機の共同利用を除いて組合は機能を停止したままです。

 その失敗を生かして、今度は母親を対象として、子豚1〜2匹、野菜種子、ビーズなど、原資
は小額で、返済も元本の20%という変則マイクロクレジット方式を実施することになりました。
手元に残るお金を増やすことで、まずは受益者の継続的生産活動を可能にしようと考えたか
らです。

総勢38名という母親クラブの集会
   技術面の指導が不足していたという前回の反省から、この1年間、地元の財団Tabang Mindanaoの支援で有機農法を学んだビラーン民族のリコ(ミンダナオ国立大学農業ビジネス学科卒業)を指導者に迎えることも決まっています。
 母親が得た収入で、子どもの教育や医療にかかる経費の一部でも負担できるようになればと、当会もこの事業の推進に協力することになりました。助成機関の承認が得られれば4月にはこのシステムの理念指導研修が始まります。講師には、本マイクロクレジット事業のもう一つの対象であるレイクセブ町のチボリ民族女性組合COWHED創設に関わったメルチさんをお願いしました。



モロ民族の助産師の卵、サミヤさんも奨学生に加わりました
 
 おもにモロ民族を対象とするパササンバオクリニックで、ナプサさんのアシスタントとして働い
ているサミヤさんは、大学の助産師コースに籍を置く勤労学生です。このコースは実習があり
経費が嵩みます。昨年は学費が払えずに学業の中断も考えました。

 幸い3名の方から奨学金支援の申し出をいただき、戴帽式、実習も無事終えることができま
した。貧困地区だけでなく、難民キャンプでも多くの母子が助産師を待っています。卒業まであ
と1年余り、がんばってほしいと思います。




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