ビラーンの医療と自立を支える会(HANDS)

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現地報告 ビラーン通信42号より

奨学生、大学卒業後の試み

 昨年NDMU商学部を卒業したスヌーリアが、精力的に住民の組織化と自分たちの学校づくりに取り組んでいます。メールの署名に「Snuria/Fruit of HANDS(HANDSの成果)」と書いてくる彼は、私たちが教育支援を始めた8年前からの奨学生です。卒業したらビラーンの仲間のために働きたいという初志を貫いて、4月には多目的住民組合Bolul Amtutung(ビラーンの聖なる山マトゥトゥンを意味するビラーン語)を創設、政府登録も済ませました。
 組合員は184名(7月14日現在)、一口1600ペソの組合費全額を支払ったものは10名程度。大多数は分割納入400ペソや入会金100ペソだけで加入しました。8年前からの住民の夢だった「アトゥモロックにハイスクールを」も、Amgu-oにある同じくビラーンの組合が運営する学校の分校として、6月に実現させました。
 
スヌーリア(左端)の活動を支えるのは、3年
前アムグ村でビラーンのための組合と学校
を創設した、従兄のノベルト(右端)と仲間
たちです。

 町ではビラーンはすぐ物を乞うといわれる。でもそれはビラーンのためといいながら、本当に
ビラーンのための事業が実施されなかったから。自分は大学で学んだ事を生かして、物乞いし
なくても生きられる村にしたい。住民も同じ仲間だから信頼してついてきてくれる。(スヌーリア
のEメールより)

 事務局からの質問や助言に答えて、週2、3回届く彼のメールはいつも希望と確信にあふれ
ています。しかし、スヌーリアの真摯で労を惜しまぬ姿勢は評価しつつも、経験不足が心配され
ます。COWHED、PFPなど、住民組織化の経験が豊かな現地NGOの助言を得ながら見守りた
いと思います。



COWHED再生にとりくむ

  レイクセブで10数年、チボリ女性の健康と経済的自立を支えるプロジェクトにかかわってきたメルチさんが、5月に開催されたCOWHEDの年次総会で組合長に選ばれました。
 39号、41号で報告したCOWHEDの直面する赤字体質の改善、製品の品質向上、市場開拓などの課題に取り組んでいきます。HANDSも10月の各種フェスタやバザーで現地製品の販売に努めるとともに、顧客の意見を伝え、製品改良を支えていきます。4、5月のイベント収益はすでにCOWHEDに還元し、新製品開発費、スタッフ手当て補助等に充当されました。
 
竹笛、ビーズ、ティナラク製品などが並ぶ店舗で(左か
ら:店舗担当マイダさん、運営主任ダイアナさん、組合
長メルチさん)



ラムアフス小学校校舎増築事業(松尾基金)

 ラムアフス小学校のあるラムブソンでは、小学校開校の翌1999年には多目的住民組合が発足。マリオ先生の指導が良く、組合は順調に機能し続け、配当も出せるようになりました。児童数も7年前に比べて倍増しました。問題は4教室を全6学年で使用することがきびしくなり、十分な指導ができなくなってきたことです。このように1998年の学校建設からずっと関わってきたラムブソンで、校舎増築を支援することにしました。後期授業開始の11月完成を目指して現在CMBと事業計画の最終確認をしているところです。  
 



国立ミンダナオ大学(MSU)にエルビーとロジャーが合格!

 前号で先住民族特別枠での合格を目指して特訓中と伝えた11名のうち2名が5月の試験に合
格、6月からMSU大学生となりました。残る9名は最後のチャンスである5ヶ月間の大学準備プ
ログラムを受講中です。10月の試験に合格すれば、正式に大学生になります。
  HANDSは新規奨学生を国立大学合格者のみに限定しました。限られた奨学金で、意欲と能
力のある青年を支援したいという方針からです。そのため専門学校進学がふさわしい子どもま
でが、MSUに挑戦している状況を見ると、授業料は安いが入学が難しいMSUに限るという方針
も再考の余地がありそうです。

<2004年度カレッジ・専門学校奨学生の経費事例> 単位:円(1ペソ=2円で換算)
奨学生名・学校の種類・学年 授業料教材費
食  費
交通費
その他
合  計
エリザベス・専門学校看護助手1年
40,218
13,621
1,624
55,463
ジョーリー・私立カレッジ2年
53,907
13,602
2,862
70,371
エドウィン・国立大学MSU2年
5,823
13,602
13,602
28,474
*MSUは郊外にあり交通費が高いという問題があります。今年さらに2割近く値上がりしました。



ブラクール近況

 今年は35名の新1年生を迎えて、ブラクール小学校の生徒数は118名になりました。ハイスク
ールの56名を合わせると174名です。教師たちは入学・進級手続きのほか、山羊飼育や果樹
苗の手入れ指導など、6月の学期初めは大変忙しく里子(奨学生)の報告が遅れています。報
告書の発送は8月初旬になると連絡が入りました。 山羊の乳が出るようになり、給食への利用
がはじまりました。匂いが気になる子どももいるようで工夫が必要です。今年も平賀基金で山
羊飼育が広がります。住民は小屋を作り、餌になるフラミンジャなどの潅木を植えて、雌山羊
の配布を待っています。



村でできる長期療養患者のためのケアーを考える−レオポルドとドネッサの場合−

 前号で報告のネフローゼ症候群のレオポルドは、4月以降2回の入院・抗がん剤治療を受け
て、ひどいむくみが消えました(写真は治療直前)。定期検査結果が4年間安定していたので、
抗がん剤治療が必要になったと聞いた時は本当にショックでした。まだまだ治療は続きます。

 昨年、産後ノイローゼが軽快して村で療養中とお知らせした元ハイスクール奨学生ドネッサ
(在学中に妊娠、中退、村に戻り出産)は、再発・悪化して、現在ゼネラルサントス市内に戻し
面倒をみているという連絡が届きました。復学が何よりの薬と主治医に言われていたので、奨
学金支援再開を考えていた矢先のことです。再発性精神障害という診断です。貧困と両親の
無関心から毎日の服薬と定期検査を中断したこと、その他子どもの死などいくつかの要因が
重なったためと思われます。主治医からは、毎日薬を飲めば早くて1年、遅くとも3年後には普
通の生活に戻れるといわれたそうですが、問題は薬代。1日400ペソ(約820円)、1年で30万円
は、HANDSの特別医療費の予算では対応できません。

 「1日3回毎食後に服用」。日本では当たり前のこの指示が、1日1食だったり、安全な飲み水
が身近にないビラーンの村では、長期間服薬を継続しなくてはいけない患者にとって簡単なこ
とではありません。
 レオポルドやドネッサのように長期治療が必要な患者に対しては、自宅療養で大切な栄養指
導、服薬管理などを身近でしてくれる村のヘルスワーカーの存在が不可欠です。助産師・薬局
及び看護助手コースを巣立った4人と在学中の2名など人材はいるのにまだ活用できていませ
ん。今後の課題です。
 ドネッサについては、現地の医療関係NGOの助言を求めて支援方法を検討中です。



蚊帳の効用−キアミ地区(3シチオ)のマラリア患者ゼロ記録更新中−
年間30名ほどのマラリア患者が出ているキアミ地区で、会員のご協力により全戸141セットの蚊帳を配布したところ、1月以降全くマラリア患者が出ていないということが分かりました。少なくとも現地CMBクリニックへの支援要請はありません。キアミ出身者がいるせいか、ゼネラルサントス市内の学生寮でも、年間3名程度のマラリア・デング熱患者が出ます。寮の蚊帳不足がわかり、6月訪問時に5枚購入・配布しました。
(写真:女子寮にて) 
 


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