ビラーンの医療と自立を支える会(HANDS)

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現地報告 ビラーン通信43号より

ベスト・ブース賞受賞! − COWHED立てなおし4か月の歩みから −

 グローバルフェスタJAPAN2005出展を終えてまもなく、COWHED組合長メルチさんから、地域
のイベントでベスト・ブース賞を受けたとのメールが届きました。

 10月7-9日、コロナダル市にて、フィリピン第12地区(サウスコタバト・スルタンクダラット・サラ
ンガニ・ノースコタバトの4州とコロナダル・ジェネラルサントス他計5市を含む行政区)組合サミ
ットのフェスタが開催されました。COWHEDのブースは飾り付けや商品配置などが、主催者で
ある組合監督官庁CDAから最高の評価を受けたのです。しかも売上額約3万円は、貨幣価値
の違いを考えるとHANDSのグローバルフェスタ売上の約3倍にあたり、COWHEDスタッフ1名8ヶ
月分の給与に相当します。メルチさん他サミット参加スタッフだけでなく、組合員すべての自信
につながる成果でした。

 このイベントを含めてHANDSは6月以降、COWHEDが自ら国内・海外市場を開拓できるよう
に、政府や民間機関主催の見本市への参加を奨励し、組合運営の研修(簿記研修など)につ
いても、ハンディクラフト事業による収益を充当して支援してきました。ダバオで開かれた8日間
のハンディクラフト見本市(8月)、地元レイクセブの湖畔で開催された「公正な価格」をテーマと
する研修参加(10月)など、大小6つの活動への支援です。

 メルチさんをリーダーとする新生COWHEDの歩みは始まったばかりです。スタッフ、組合員の
がんばりを、私たちも現地製品の販売促進により支えていきたいと思います。



発足1年目を迎えたLIPAD(先祖伝来の土地に関する先住民族同盟)

 先祖伝来の土地で持続可能な農業を推進するPFPから、発足1年目を迎えたLIPAD会議に
事業部長のロニーさんが出席したとのメールが届きました。LIPADは先住民族が大規模開発
にノーと言える権利と、先祖伝来の土地保証CADTの取得を推進する先住民族同盟です。ミン
ダナオ中南部の先住民族ビラ−ン、マノボ、チボリ、ウボ、ティルライ、マギンダナオムスリム、
計6民族の住民組織(PO)が昨年9月に結成したもので、1周年を迎えた9月30日に改めてこの
CADT取得に向けた戦略を話し合いました。

 CADTは大規模開発計画に対して、先住民族がその土地の権利を主張することを保障する
だけで、生活が豊かになる保証書ではありません。そのため、ドールなどの多国籍農業資本
によるバナナやパイナップル契約栽培の勧めに土地権を放棄するケースが後を絶ちません。
一時的にせよ、まとまった現金収入がある契約栽培は大変魅力あるものです。学校や水道、
道路などのインフラ整備が提供されることもあります。

 PFPが代替手段として進める傾斜地農法によるアグロフォレストリ事業は、この点で大変意
味があります。CADT取得が確実に生活向上に繋がるように、今後もPFPの活動を支援する予
定です。



ブラクール近況

 昨年は干ばつにみまわれ作物の出来が悪かったブラクール。住民組合は活発に活動してい
るのに、暮らしぶりは良くなりません。ブラクール高校のジェームズ先生(農業担当)に学校農
園を案内していただきました。

 「この循環システムは有機的であるだけでなく、エコロジカルバランスがとれています。私たち
はまず土が大切であることを学びました。地味が肥えていれば、植物は健康に育ちます。化学
肥料は高価ですし。また果樹は早く収穫できるよう、手入れを適宜行っています。ほっておいた
場合は通常収穫まで6年かかりますが、学校のアグロフォレストリーの果樹は5年で収穫できま
す。1999年に植えたランブータンとコーヒーはすでに収穫しています。このシステムを知る前
は、フラミンジャの葉は捨てていました。また土に肥料をやることもしていませんでした。それは
土にとっても良くないことです」(ジェームズ先生)

 ほんの100年前までは狩猟採集民だったチボリ、マノボの人々は、農業の技術を持っていま
せんでした。山に自生する野菜や果物を集め、野生動物を狩って食べていたのです。いま、ひ
とつひとつ学びながら森林の再生と自立への道に取り組んでいます。

 「私たち教師は、この循環システムと技術を組合員に教えているところです。そのためにも循
環する輪の一部である山羊が必要です」(ジェームズ先生)

 学校の山羊小屋では、20頭の雌山羊と2頭の雄山羊が教師とハイスクール生によって飼育さ
れています。山羊組合に100ペソ支払い加入すると、雌子山羊が産まれれば順番に配布され
ます。雌山羊は年1回5年間出産し、子山羊は1頭1200ペソで販売できます。上手に育てれば
循環農業に貢献するとともに貴重な現金収入になるのです。雌子山羊を受け取った組合員は
まだ3軒。これからが期待できます。


子山羊は山羊組合の組合員に配布する大事な家畜。
イキイキと山羊の話をするジェームズ先生

剪定したコーヒーの木の成長具合を確かめる。
右はPFPスタッフのニック

 一方、医療に関しては悲しい話を伺いました。7月に小学校2年生の男子生徒(8才)が亡くな
ったそうです。原因は破傷風で、適切な治療をすぐに受けられなかったこと。その生徒は学校
の庭で遊んでいて、竹製の花壇のフェンスを踏み抜いてしまいました。教師がすぐ抜き、消毒
し、かさぶたもできましたが、1週間後発熱、その3日後に亡くなりました。叔父の家に寄宿して
学校に通っていたのですが、叔父も実家の両親も、町の病院へ連れて行く交通費、診察費、
薬代(合計最低でも500ペソ)を工面できなかったのです。
 住民組合とアドバイザーのPFPは今、@図書室の半分を保健室にする、A資格を持ったヘ
ルスワーカーを育成する、B健康保険組合を活性化する、という計画を立てています。Aにつ
いては教師のうち1名を公的機関でトレーニングを受けさせる予定。Bは加入費35ペソ、月々
15ペソ積立てると家族全員が保障の対象となる組合があるのですが、その積立金を払える住
民がほとんどいないそうです。
 住民組合の主だったメンバーとのミーティングでは、やはり大きな問題は、医療と、道路が悪
いため作物の出荷が大変だということでした。



栄養不良児童のための給食事業

 豚肉、魚、カボチャ、モンゴ豆、塩、大きな鍋、フライパン、調理器具などと一緒にラムアフス小学校を訪問しました。空腹のため授業に集中できない子どもたちのためにと、小学校の先生方が待望していた給食が始まります(週3回、おかずのみ)。住民集会では、おかずの種類を増やすための学校菜園の手入れの順番や、調理の順番を1年先まで決定済みです。気になるのは給食がない日のこと。「バナナやふかしたイモ、それすら持って来られない子どもは水だけで昼休みを過ごしています」とのこと。 この事業はラムアフス小学校の他、アトモロック小学校、キアミ小学校の3校、約300名の児童のために3年間継続の予定です。
 
調理はお母さんたちが1週間交代でボランティアで行
います。栄養価の高い食事の作り方、食育を学ぶ
トレーニングを兼ねています。

学年ごとに並び、1年生から盛り付けます。調理室は校庭のすみに建設中です。
 
朝炊いた大事なお米を、バナナの葉に包んで持参します。食事は教室で。


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