ビラーンの医療と自立を支える会(HANDS)

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現地報告 ビラーン通信45号より

− 森と人を育てる新たな10年に向かって −

 「村人から要請を受けて総面積4750uの先祖伝来の土地保証(CADC)を受けたダグマ山系
の7村を訪ねた。周りはすべて契約栽培によるバナナやパイナップルの畑で囲まれていた。こ
の7村も焼畑に頼っていては、わずかに残る森もすぐ消滅する。このままだと急斜面のコーン
栽培で土壌浸食を悪化させるか、大農場と契約して商品作物の単一耕作に移行するかしかな
い」 - 現地協力組織PFPのメール(4/10)より -

私たちはここ数年間、PFPに協力してミンダナオ島南部ロハス山系及びドグマ山系で傾斜地農
法によるアグロフォレストリーを進めてきました。環境修復と先住民族の収入向上に有効かど
うか、真の評価はこれからです。初年度に植えた果樹苗が、ようやく本格的に収穫が始まると
いう段階です。しかし、このメール報告のように、PFPの指導と支援に期待し、持続可能な農業
を行うことで住み慣れた山で経済的に自立したい先住民族の村はまだまだたくさんあるようで
す。

 マトゥトゥン山のふもとに広がるドール・パイナップル農場の真ん中で、ビラーンの土地を返せ
と作業道に小屋を建てて抗議中の住民に会ったのは1996年4月のことです。サムラングでは、
銅山会社の求めに応じて土地提供同意書に拇印を押してしまった住民たちが、同意書の無効
を求めて裁判で争っていました。これら土地問題で結束する住民との出会いは、3ヵ月後の
HANDS立ち上げのきっかけとなりました。今10年が経過して、土地や開発資本に対する住民
の選択がずいぶん多様化したと感じています。大農場との契約によるパイナップル栽培が急
速に拡大し、近隣の学校では、ドール払い下げのトタン板を校舎の屋根補修に使い、教室に
は寄贈された頑丈でカラフルな椅子が並んでいます。

 「山の村々で持続可能な農業を指導したい。力を貸してください。」この3月、国立MSUの農業
経済コースを終了した元HANDS奨学生ボニファシオからもこんな趣旨のメール(4/2付)が届き
ました。新卒のボニファシオにできることは限られています。しかし、先祖伝来の土地で持続可
能な農業を学び、経済的に自立したいという住民の希望と選択があり、一緒に働きたいという
パートナーが現地にいる限り、私たちも先住民族支援の原点に立ち返り、同時に状況の変化
に柔軟に対応しながら活動を続けたいと思います。

 民族の伝統技能を女性の自立に結びつけるためハンディクラフトの販路拡大努力を続ける
COWHED、薬草利用や鍼灸導入と村の保健ボランティア育成で貧しいモロの村の健康増進を
はかるPIHS。これらふたつの女性主導の組織も、CMB、PFPとともに私たちが先住民族の経
済的自立を支援する上で大切なパートナーです。そして、パートナーとの連携を一層深め、私
たちに欠けていた住民の声を直接聞く機会を増やすために、初代駐在員として相田さんがこ
の5月(総会承認後)正式に赴任します。



COWHEDこの1年の活動から

 民族の伝統技術を受け継ぐ女性たちの組合COWHEDに対して、昨年度は先行投資のつもり
で私たちのハンディクラフト事業収益の多くをその支援にまわしました。COWHED自身が市場
開拓のため動けるように資金面のバックアップです。以下は代表のMelchi Uyasanさんによる
報告(4/25付メール)です。抄訳をご紹介します。


 まず2005年度に組合員が大幅に増加したことをご報告させていただきます。1年前に88名だった会員が現時点で101名になりました(退会1名、入会12名)。これら新入会の12名は、ほとんどがこの3月のセブとマニラの貿易フェアに製品を委託出品したのをきっかけに組合員になりました。

 昨年度HANDS支援により参加した見本市、貿易フェア、工芸品市は、上記マニラのNational Trade Fairやセブ島でのSocial Development Week in Ayala など主なものだけで5回、このほか組合サミット女性会議など地域レベルのものにもいくつか参加しました。

 3月のマニラとセブでは、それぞれ、38,066ペソ(約8万円)と24,260ペソ(約5万円)の売り上げがあったほか、新たな注文も90,000ペソ分受けました。サンプルを送ってくれというバイヤーもいて新たな注文につながることを期待しています。さらに、通商産業省からもサンプルの送付や製品に対する問い合わせがあって、2-3ヵ月後には納品の予定です。

 このような貴重なチャンスをつかむことができたのは、品揃えのための準備金、交通費、滞在費、出展料などについてHANDSからの資金援助があったからです。これまでは注文があっても、その材料を購入する資金が手元になくて、せっかくの機会をみすみ逃す場面がありました。今は売り上げが伸びたおかげで、次の生産の元手を確保できるようになりました。

 組合活動のうち、店舗部門は仕入れができずに休業したままです。近い将来、ハンディクラフト事業の収益が安定したら、米や調味料、雑貨などの日用品を買い入れて、組合員により安く提供するという組合の生協機能を復活させたいと思います。店舗部門で収益が出れば組合員への配当金が出せます。

 「夏の都」と呼ばれる避暑地でもあるレイクセブは、夏休みの今、合宿や研修のお客でにぎわっています。私たちも将来的には湖を見下ろす地点にある組合の用地に、ハンディクラフト館と宿泊もできる研修センターを建設したいと思っています。民族文化やハンディクラフトの紹介と販売に加えて、施設を研修会場として提供することで組合は収入を見込めますし、女性たちに働く場を提供できます。このように組合運営を多角化することで、組合員や地域の先住民族女性たちの生活向上を実現できたらと考えています。



2005クリスマスプレゼントその後
 モスン教育の子どもたちへは、屋根だけだった教室に竹製壁を取り付ける費用を支援しました。写真は3月初旬に行われた、州の栄養担当者による給食プログラムを行うかどうかの調査の様子です。栄養状態が良くないことがわかり、給食が始まることになりました。先住民の小さなコミュニティに州の支援が届くのは、組織がうまく運営されている証拠だと思います。また、子どもたちが来ている黒色のTシャツは2004年のクリスマスプレゼントです。来訪者がある時など特別の機会に着用しているそうです。  

 ブラクールの子どもたちへは、テレビとビデオデッキと教育用ビデオテープ一式です。個人に
プレゼントを渡すよりも全体のために、と学校の理事会と先生方で決めました。1月から小学校
と高校それぞれ1週間に2回ずつビデオ視聴の授業を行っています。
 ほとんどの子どもたちはテレビを見るのは初めてです。今まで言葉だけの説明で実感がつか
めなかったことが、映像をともなうことで理解しやすくなりました。野生動物のビデオを見ること
で環境を守ることの大切さを学んだり、音楽やアルファベット、数学用の教育ビデオもあるそう
です。発電機を動かす灯油代(約1800円/月)が学校運営に大きな負担ではありますが、教育
の理解促進のために続けていく予定です。


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